
梅雨の高速道路を走っていると、前を走る車のタイヤが跳ね上げた水しぶきで一瞬視界を奪われる経験は誰にでもあるだろう。多くのドライバーはこの瞬間ハイドロプレーニング現象だけを警戒しがちだが、実はもっと厄介な被害がある。水しぶきに混じって跳ねてくる路面の小石、いわゆる「飛び石」だ。フロントガラスに傷がつく瞬間、問題はそこから始まる。加害車両を特定できなければ車両保険で処理する単独事故として扱われるため、状況に応じた対応をあらかじめ知っておいた方がいい。

雨の路面では小石がタイヤの遠心力と水流の圧力を同時に受け、想定より遠くまで速く跳ね上がる。特に複輪を装着したトラックやバスは、タイヤの間に小石が挟まりやすく主な危険要因とされる。交通安全協会などによると梅雨時は曇天による視界の悪化、路面状態の悪化、聴力の低下など複数の要因が重なり、追突事故やスリップ事故が増える傾向にある。視界の悪い天候であるほど携帯電話の使用を控え、法定速度より減速する必要がある。

飛び石被害に遭ったら、まず加害車両を特定できるかどうかを確認すべきだ。ドライブレコーダーの映像で前走車を特定できれば相手方の保険会社に費用を請求できるが、一瞬で通り過ぎる事故の性質上、証拠確保は容易ではない。特定できないまま車両保険で修理すると「1等級ダウン事故」として扱われ、事故1件につき等級が1つ下がり翌年の保険料が上がる。修理費が数万円程度なら自費で対応した方が、等級ダウンによる保険料増額より安く済むケースが多いというのが業界の見方だ。

落下物による損害賠償責任は道路交通法上、原則として「落とした本人」にある。ただし高速道路という性質上、加害車両の運転者自身が落下に気づかないまま走り去ってしまうケースがほとんどで、実際には賠償を請求する相手を特定できないことが多い。NEXCOなど道路管理者側に責任を問うのも、巡回や清掃といった管理体制に明らかな不備がない限り、法的に認められるのは難しいのが実情だ。

フロントガラスの破損は大きさによって修理方法と費用が変わる。500円玉程度までの小さな傷なら専用樹脂を注入するリペアで修復でき、費用は1万5千円〜3万円程度だ。一方、ひびが広がったり視界を妨げる位置にあったりする場合はガラス全体の交換が必要になり、国産車で3万〜15万円、輸入車ではそれ以上かかることもある。傷を見つけてすぐ対処できるかどうかが、費用の差を分ける決め手になる。

加害車両が不明な落下物事故で人身被害まで負った場合、事故日から3年以内であれば政府保障事業に申請できる。傷害は最大120万円、後遺障害は等級に応じて最大4,000万円、死亡は3,000万円を上限に、国が自賠責保険の基準に準じて補償する。ただし請求は損害保険会社の窓口でのみ受け付けており、審査から支払いまで通常6か月から1年以上かかる。梅雨の高速道路を控えているなら、フロントガラスの状態とドライブレコーダーの作動状況を今のうちに確認しておきたい。