
『Apple』の『Car Key』は、『iPhone』や『Apple Watch』で車両をロックおよび解除できる機能である。しかし発売から3年が経過した現在も、一般への普及は進んでいない。現地時間10日、『ITメディア 9to5Mac』は『WIRED』の報告書を引用し、この技術が広く浸透しない要因を分析した。
2020年に登場した『Car Key』は、『iPhone』や『Apple Watch』をデジタルキーとして利用し、車両のロックや解除、エンジン始動を可能にする機能である。この機能は、『Tap-to-open』用の近距離無線通信(NFC)と、車両に近づくだけでロックが自動解除される超広帯域無線(UWB)技術の両方に対応している。
デジタルキーは、多くの利点を提供する。家族に追加キーを渡す際にも自動車メーカーに追加費用を支払う必要がないほか、『Car Key』を使用していれば、車両の外側で誤ってドアがロックされる事態を防ぐことができる。また、無線周波数スキャナーを利用した盗難手口にも対策されている。さらに、バレーパーキングや整備士向けの時間制限キー、車両への出入りのみ可能でエンジン始動はできない子供用制限キーなど、さまざまな設定にも対応している。
しかし、自動車メーカー側の導入は依然として遅れており、対応車種を所有している運転者でさえ、この機能を利用していないケースが少なくない。『WIRED』は報告書で、『Car Key』の普及を阻む三つの障壁を指摘している。
第一の障壁は互換性の問題である。すべての車両が『Car Key』に対応しているわけではなく、一部メーカーは独自のデジタルキーシステムを固守している。家族間で『iPhone』と『Android』が混在する場合、統一されたデジタルキー標準が存在しないことも問題となる。カー・コネクティビティ・コンソーシアム(CCC)が標準化を進めており、Appleもメンバーとして参加しているものの、世界的な標準整備には時間がかかると見られる。一部メーカーが導入に慎重姿勢を示す可能性も指摘されている。
第二の障壁は、消費者の認知不足である。現在『Car Key』に対応する車両の所有者でさえ、この機能を知らないケースが多く、販売店側でも十分に説明できない状況がある。
第三の障壁は、心理的な抵抗感である。多くの運転者は従来の物理キーに慣れており、デジタルキーへの信頼性が十分に確立されていない。使用方法が従来と異なるため慣れるまで時間を要するほか、スマートデバイスを車の鍵として利用することに不安を覚える層も多い。『WIRED』は、こうした要因が複合的に作用し普及を妨げていると分析している。
一方、『Car Key』は『Apple Wallet』に対応した特定メーカーの車両で使用可能であり、2020年に『BMW』で初めて導入されて以降、『メルセデス・ベンツ』、『ボルボ』など対応ブランドは徐々に拡大している。

