「充電5分、1200km走る」紅旗が証明した全固体電池、EVの三大弱点が消える日



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引用:サムスン

電気自動車(EV)時代の根本的な課題である航続距離の短さ、冬季の性能低下、そして火災への不安を一挙に解決する「次世代バッテリー(夢のバッテリー)」が、ついに研究室を出て実際の道路に登場した。中国のプレミアムブランド「紅旗(ホンチー)」が、全固体電池を搭載したSUV「天宮06」のプロトタイプによる実走行テストを公開し、世界の自動車市場に一石を投じた。

紅旗の親会社である中国第一汽車集団(FAW)は2025年12月31日、自社開発の全固体電池パックを電動SUV「天宮06」に搭載することに成功したと発表した。この成果は約470日間に及ぶ集中的な研究の結実である。単なる理論検証を超え、実際の走行条件下での安定性と統合制御性能を確認する実戦段階に入ったという点が極めて重要だ。紅旗は今回のテストデータを基に、2027年からフラッグシップセダンおよびSUVラインナップに全固体電池を順次導入する計画を立てている。

全固体電池は、既存のリチウムイオン電池の液体電解質を固体に置き換えた技術である。これにより体積エネルギー密度を800〜1,000Wh/Lまで画期的に引き上げることが可能となり、1回の充電で800kmから最大1,200kmの走行が可能になるという。また、氷点下30度の過酷な環境でも約72%のエネルギーを保持できるとのデータもあり、冬季の航続距離減少というEV特有の課題を解消することが期待されている。

最大の利点は安全性だ。既存の電池は液体電解質の漏れや熱暴走による火災リスクが課題であったが、全固体電池は不燃性の固体素材を使用するため、火災リスクが極めて低い。また、充電時間も飛躍的に短縮され、5〜10分程度の短時間充電で長距離走行が可能になるなど、利便性は内燃機関車と同等レベルまで向上する見通しだ。

市場の主導権を巡るグローバル企業のスピード競争は、まさに「次世代電池戦争」の様相を呈している。トヨタ自動車は2027〜2028年に10分間の充電で1,200km走行できるバッテリーの投入を公言しており、海外メーカー各社も2027年以降の商業化を目指してパイロットラインを稼働させている。中国政府も国家レベルで60億元(約1,300億円)規模のコンソーシアムを構成し、BYDやCATLらと協力して技術の商業化を全面的に支援する構えだ。

業界では全固体電池の本格的な普及は2030年以降と予測されているが、2027年から始まるフラッグシップモデルでの激突が、今後10年の主導権を決定づけると分析されている。東京〜大阪間の往復をも無充電でこなす距離をわずか数分で充電できるようになれば、現在のEV需要の停滞(キャズム)は一気に解消に向かうとの見方が強い。紅旗「天宮06」の成果は、全固体電池時代の到来が予想以上に近づいていることを示す象徴的な動きといえる。

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