
タイの自動車市場において、中国の自動車メーカーがトヨタ自動車の現地化戦略をベンチマークしている。BYDや上海汽車集団(SAIC)、長安汽車など20以上の中国ブランドがタイ市場でシェア20%を占めるまでになったが、激しい価格競争が現地消費者の反発を招いているためだ。
一方でトヨタは、60年にわたる現地化によりシェア37%を維持している。中国メーカーはトヨタにならい、タイを輸出ハブとして位置づけ、部品の現地調達や教育投資を拡大させている。BYDはタイから欧州への輸出を開始し、SAICは技術教育施設を開設した。
「Nikkei Asia」の23日付の報道によると、日本の競合他社から市場シェアを奪い、タイ市場の2割を占めるに至ったBYDなどの中国勢は、今やトヨタから将来の成長戦略を学ぼうとしているという。
● 中国勢シェア2割も価格競争に反発
BYD、SAIC傘下のMG、長城汽車、長安、広州汽車集団(GAC)など、20以上の中国ブランドがタイ市場に進出した。現地幹部は「過去3年間で中国車の普及は予想以上に早く進んだ」と述べる。
しかし、中国メーカーの経営陣は2026年以降の状況について深刻な懸念を表明している。タイ政府は今年、電気自動車(EV)購入に対する最大15万バーツ(約66万円)の補助金を廃止する予定だ。「今年は価格引き下げなしで、我々の製品がタイ市場で受け入れられるかが本当の試金石となる」と経営陣は語った。
過度な値下げを主導するBYDに対しては、集団訴訟も検討されている。相次ぐ値下げが既存オーナー車両の下取り価値を下げるとの懸念からだ。一方、合衆新能源汽車の「哪吒(ネータ)」ブランドは、深刻な財政難により交換部品の不足に直面している。
● トヨタ、60年の現地化でシェア37%を維持
2023年に中国勢が攻勢を強めた後、タイの新車販売の約9割を占めていた日本メーカーのシェアは、2025年には69.3%に低下した。いすゞ自動車のシェアは12%、三菱自動車は4.2%となっている。
日本メーカーが逆風に直面する中でも、トヨタは堅調な地位を確立している。2025年のシェアは37%と、2022年比で3ポイント上昇した。トヨタは手頃な価格帯のハイブリッド車(HEV)のラインナップを拡充し、ピックアップトラックのモデル数を増やすことで対応した。
中国メーカーの幹部は「我々は過去60年間、トヨタがタイでどのように受け入れられてきたかに関心がある」と述べた。具体的には1970年代初頭、タイで日本製品の急増に伴うボイコット運動が発生した際、当時の米国トヨタ自動車販売の会長であった東郷行泰氏が、タイ文化の理解と融和のために仏門に入った逸話などに言及している。
トヨタの成功の鍵は「現地化」「輸出ハブ化」「部品調達」「教育投資」にある。1970年代の苦い経験を経て、トヨタは1975年に技術者教育施設を設立。ピックアップトラックなどの主要モデルでは90%の現地部品調達比率を達成し、地域の雇用創出に貢献した。さらに「トヨタ自動車大学校」を設立するなど、教育分野への支援も継続している。
中国企業もトヨタにならい、タイを輸出ハブとして開発しつつある。BYDは8月にタイ製車両の欧州輸出を開始し、長安汽車も12月にSUVの欧州輸出を始めた。SAICは1月に新エネルギー車(NEV)技術教育施設を開設している。
業界の専門家は「中国企業が価格競争で反発を受ける中、トヨタの60年にわたる現地化戦略を学ぼうとしていることは注目に値する」とし、「単なる完成車の輸入販売ではなく、現地生産や部品調達、教育投資の拡大が不可欠だ。トヨタのようにタイを東南アジアの輸出ハブとして活用すれば、周辺国市場の攻略も可能になるだろう」と指摘した。長期的な成功には、徹底した現地化が不可欠であるとの見方を示している。