
【引用:depositphotos】冬季の低温環境におけるエンジン予熱は、長年にわたり機関保護の基本とされてきたが、現在の車両技術を前提にすると再整理が必要である。機械制御が主流だった時代と異なり、現代のエンジンは電子制御燃料噴射と高効率潤滑設計により、始動直後から安定したオイル循環が確保される。そのため長時間の停車アイドリングは必須条件ではなく、燃料消費や排出ガスの増加といった副作用が目立つ場面も少なくない。

【引用:depositphotos】ガソリン車およびLPG車では、始動後おおむね30秒から1分程度でエンジン内部の潤滑は十分な状態に達する。重要なのは停車中に回転数を維持することではなく、発進後の走行負荷の与え方である。住宅街や一般道レベルの速度域で、最初の数分間は加減速を抑えた穏やかな走行を行うことで、エンジンと同時にトランスミッションや駆動系全体の温度を均一に引き上げることができる。

【引用:depositphotos】一方、ディーゼル車は燃焼方式の特性上、低温時に機関温度が上がりにくい。冷間状態では振動や燃焼音が増大しやすいため、冬季は短時間のアイドリングによって内部温度を安定させることが望ましい。計器内の予熱表示が消灯した後に始動する手順は基本とされる。ハイブリッド車については、車両制御ユニットが外気温やバッテリー状態を総合的に判断し、エンジン介入を自動制御するため、運転者が意識的に予熱時間を管理する必要はほとんどない。

【引用:depositphotos】予熱と同様に重要なのが走行後の冷却配慮である。特にターボチャージャー搭載車や高速走行後では、エンジン停止のタイミングが耐久性に影響を与える。高温状態で直ちにエンジンを停止すると潤滑油の循環が途切れ、内部部品に熱負荷が残る可能性がある。到着前に負荷を下げた走行で自然冷却を行い、駐車後も短時間エンジンを維持する運用は、結果として機関寿命と整備コストの安定化につながる。現代車両における予熱の本質は、アイドリング時間の長短ではなく、走行前後の操作全体にある。